コラム「水準器」


■9/1 「人は感情から老化する」

 最近、物忘れがひどくなった。昨日の晩ごはん何を食べたか思い出せない、同じ号の週刊誌を2冊買う、人の名前が出てこない、会社で別の机に行って何をしにきたのかわからない、3日前見たばかりの映画の題名が出てこない、午後2時ごろ昼ごはんを食べたのか他人に聞く、約束の場所、時間が不安になり確かめる、ゴルフでロングパットが入るとボギーをパーと言ってしまう……まだまだある。ボケはじめたのかと思い、同じ年頃の人をつかまえて聞くと、ほぼ同じような答が返ってくる。ひと安心だ。
 本屋をぶらぶらしていたら「人は感情から老化する」(祥伝社新書)という本が目にとまった。著者は精神科医の和田秀樹という人だ。人は老いていくにつれ記憶力の衰えを気にするが、これは大したことではないと和田さんは説く。人間の老化は「知力」「体力」より、まず「感情」から始まるという。知能、知性は高齢になってもさほど衰えないし、運動能力もパワーは衰えるものの今までやってきたことはできる。
 怒り出したらずっと怒っているとか、感情のコントロールや切り替えができなくなったり、自発性や意欲が減退していく「感情の老化」が人間のすべての老化の元凶だとする。そしてその老化を食い止め、遅らせるために少しでも若くありたいという気運がますます高まっている。健康食品ブームやメタボリックシンドロームという言葉の流行は体の老化を防ごうという考えに基づくものだ。今や「健康」「脳の機能」「見た目」の3つが中高年の3大関心事だ。
 感情が老化すると、すべての物事への意欲や自発性、好奇心が低下する。これが高じると引きこもり老人のような状態になってしまう。この感情年齢の進行を防ぐ手段があるのか。頭の体操より家庭菜園や麻雀、ギャンブル、そして女性なら手を動かすことが感情の老化を防ぐという。年を取ると夫婦共通の趣味を持てというが、感情コントロールに関してはむしろ弊害の方が多いという大胆な仮説もたてている。
 日本人は外国の人達に比べて、いつまでも若くありたいと願う心が強いといわれる。人生の最後をあるがままに受け止め、じたばたしない潔い老人になりたいと思っているが、その時が訪れるまでわからないのが正直な心境だ。