コラム「水準器」


■06/01   アジアの人達と話をした

 この1カ月ほどで、タイ、台湾、香港、韓国と立て続けにアジアの人達と会う機会があった。それぞれ個別に、サラリーマン御用達の居酒屋でお酒を酌み交わしながら話し合った。彼らが日本人に抱いているイメージは、何に関しても昔から「質」にとにかくこだわる国民で、勤勉、実直、ウソをつかないという信頼感がベースになって評価されていることがわかった。とくに阪神大震災、東日本大震災と未曾有の大災害にも、冷静、沈着、パニックに陥らず、整然とした行動に心を打たれたという。中国人が経済力を背景に、いくら威張っても、この品性と他人を思いやる心には程遠い存在だというのも共通した見解だった。
 ところが、彼らが日本にやってきて奇異に感じることがある。街も清潔できれい、人々は親切、とくにお店で働く人達の笑顔と行き届いたサービスは母国にはないと口をそろえて絶賛する。そんな日本人だが、電車の中のマナーだけはいただけないという。シルバーシートを平気で若い人達が独占している光景に驚きを隠せない。とくに香港の人は、母国では絶対ににあり得ないことだと憤る。もし香港にそんな若者がいれば、車内にいる全員でつまみ出すそうだ。
 敬老精神の欠如なのか、自分が疲れていれば年寄りは無視していいと思っているのか、ともかく、マナー後進国が多いといわれるアジア圏でも、この光景だけは日本特有のもので、目に余るというのだ。しかも、座席にふんぞり返っているほとんどの若者がスマホに目を落とし、周囲に誰がいようが気づかぬふりをしているとも見られている。何とも残念なことである。
 もうひとつ、最近になって日本人は価格への異常ともいえる執着が見られるという。アジア人から見ても、最近の日本人は生活がエコで、チープ志向が強まった。少ない所得を賢く管理して羽目を外さない。旅先でもとにかくお金を使わなくなった。そんな日本は今やアジアの盟主の地位、何処へと思われているのだ。消費のバロメーターともなっている百貨店の売り上げも、かろうじてインバウンド消費で落ち込みを食い止めているのが実情だ。アベノミクスも第2、第3の矢が完全に空振り、それを見越してますます消費は低迷し、とにかくお金が動かなくなってしまった。この状況は台湾の人によると母国と同じだという。
 この現象が生んだ事件が『てるみくらぶの格安ツアー』の破綻と見ることができる。チープ志向から生まれた、安物買いの銭失いの典型例で、今後も非婚化、少子化、労働人口の減少などが重なり、日本はさらなる景気の低迷が続くと、アジアの人達は分析している。