コラム「水準器」


■07/15   「天神祭」市民船の運航が中止に

 幼い頃から祭りが大好きで、お神輿の行列の後をついて歩いていたら、見たこともない町に出てしまい、パニックに陥った経験もある。迷子になってしまったのだ。小欄の育った豊中市は、戦後間もなくは田舎であった。家のすぐ近くにあった村の鎮守のお祭りがあったように記憶している。ともかく、祭り囃しが聞こえてくると、心が浮き立ち、居ても立ってもいられないという困った性分の持ち主であった。高校生になった頃から岸和田のだんじり祭り、姫路の喧嘩祭り、那智の火祭、神戸のみなと祭など、一人で祭りを見るためだけに遠征していた。周りから変わった奴だと思われていたに違いない。
 さて、大阪の夏の風物詩、約120万人が訪れる「天神祭」まで2週間。日本一長い天神橋筋商店街にはギャル神輿の幟がひるがえり、テンポのよい祭囃しが1日中聞こえてくる。1年の中でも一番暑い時期だが、耳に心地よく届く。これも祭り好きだからだろうか。毎年、7月25日、陸渡御見ることにしている。大阪天満宮からほど近い高速道路の下を定点観測の場所と決めている。勇壮、華麗な船渡御より、のんびりというか、大阪らしく、だらだらと大川の船着き場まで歩く行列を見るのが好きなのだ。
 その天神祭に異変が起きている。 メインイベントの「船渡御に参加する「市民船」の運航が、企業からの協賛金が減った影響などで中止されることが決まった。。天神祭は全国の他の祭りと同じく、資金難に苦しんでおり、累積赤字は昨年度までで約3400万円にのぼるという。主催者側はインターネットなどで幅広く出資金を募る「クラウドファンディング」を導入した。しかし、これもお隣京都の祇園祭が同じ方式で億単位のお金を集めているのに対し、悲しいことに天神祭はまだ数百万円しか集まっていない。
 この市民船は、約100隻が大川を航行する伝統神事の船渡御に加わる1隻。10年以上前から始まった。抽選で選ばれた市民らが遊覧船「アクアライナー」に乗り込み、船上から無料で祭りを楽しんでいる。支出の見直しを進める中で、収益性のない市民船の中止が決まったという。たった100分の1の出来事とはいうものの、市民のささやかな楽しみが奪われることに変わりはない。
 この資金難の大きな原因が、10年ほど前に明石市で起きた歩道橋事故にある。祭りとセキュリティのあり方が問われるきっかけだったのと同時に、日本全国の祭りや花火大会で警備費用がかさむことになった。天神祭りも例外ではなく、赤字のほぼすべてが警備費(人件費)で、このまま推移すると、祭の存続さえも脅かされかねない。過剰反応社会の弊害がここにも現れている